家に一日中いるわんこ達。
一見すると自由だし、ストレスもなさそうだ。
そんな生活を「羨ましい…!」と思う生徒さんもいるかもしれない…。
ホントにそうかな?
今回の授業は
- イタズラが苛烈
- 破壊神さながらにものを壊す
- 要求吠えが苦情レベル
- 1日中床の匂いを嗅いでいる
- 隙あらば手やズボンなどを狙ってくる など
こういった反応がみられるわんこ達を救うべく、授業を受けに来た生徒さんには普段の生活に取り入れたいポイントを分かりやすくお伝えしていこう。
本当にストレスがないのか
人間の場合
私たちがストレスを感じるのは、たいていの場合「人間関係」によるものだ。私の言葉ではなく心理学者アドラーさんの本にそう書いてあった。
仕事がキツいとか、お金が足りないといった悩みも「誰かと比べて」そう感じるものなので、やはり「人間関係」によるもので間違いないとのことだ。
1日のタスクはどうだろうか。
8時間は仕事、8時間は睡眠、8時間は自由時間だ。こんなにきっちりとはいかないだろうが、内訳としては分かりやすい。
仕事からは様々な思考や作業を得ることができるし、自由時間には映画を見て感動したり、散歩に出かけて景色を眺めたり、ジムにいってワークアウトもできる。
つまり我々人間には何かしらのやることがあり、また、やることを自ら作り出せる自由な環境が整っていることがお分かりいただけるだろう。
犬の場合
では、犬は?
犬たちがストレスを感じるのはたいていの場合「やることの不足」によるものだ。もちろんスポーツなどのさせ過ぎによる肉体的ストレスや高圧的な飼い主による精神的ストレスなどもあるが、一般家庭のわんこには珍しいケースだ。ネグレクトに近い環境で時間を持て余している場合がほとんどである。
せっかくなので家庭犬の1日のタスクも見てみよう。
8時間は睡眠、もう8時間も睡眠、8時間は自由時間だ。
好きに寝て自由に過ごせるなんて羨ましい…と思うならあなたは犬を飼うべきタイプの人間ではない。
犬は人の道具として造られた存在だ。怒られそうな表現だがまぎれもない事実だ。ほんの100年くらい前までは実際に仕事をしていたのだ。仕事内容は犬種によって多岐にわたるが、仕事の対価にご飯をもらい、仕事で疲れるからぐっすり眠れるといった具合だ。
現在のわんこ達は働いている方が稀で、そのほとんどがニートだ。ニートを拗らせて「自宅警備員」として活躍しているコも多く見かけるが、飼い主が喜ぶ仕事ではない…。
遊びに出かけたくとも家から出られないうえに、ようやく訪れた自由時間に飼い主を遊びに誘ってみれば疲れているだの鬱陶しいだのと相手をしてもらえない…。少ない自由時間に退屈を紛らわせようと黒板に書いたような行動が起きるのは果たして犬の責任だろうか。
要するに何が言いたいかというと、人間と比べて圧倒的に1日のタスクが少ない、自由な環境でないということが伝われば今日の授業は御の字だ。
辛辣な言葉の数々が一つでも生徒さんの心に刺さったのなら嬉しい。なにくそとこれからの生活を改善していただければ私もわんこも幸いだ。
タスクの重要性が分かったかな?
生活のパート分け
ではどのように退屈を軽減するべきか。
それはずばり、タスクを作ること。
人間と同じように仕事・自由時間それぞれにタスクをつくり、わんこにこなしてもらう。
無理だという方は犬を飼わないことをおススメしたい。
仕事パート
先程も書いたが、ほんの100年くらい前までは狩りやら牧羊のお手伝いやら、運搬やらと犬種ごとの特性を活かして頭を使って働いていた。
人間が生活するために犬の力が必要だったため、行動を教え、指示を出して、共に仕事をこなしていたのである。
現在は仕事に犬が必要なくなったとはいえ、犬の特性が消えるわけもなく、むしろ犬達は生まれ持った特性を使いたくてうずうずしている。
一緒に遊んだり、オビディエンスを練習したり、ドッグスポーツやダンスなどで指示を出したりといった、こちらから能動的に関わる時間をあなたのできる限り作ってあげてほしい。
自分で時間が取れない場合は保育園などのサービスの利用も視野に入れるといいだろう。有料だがあなたの代わりに体を動かしたり、頭を使ったりさせてくれる。
遊び方は後述するよ。
自由時間パート
自由時間とは、私たちがかまってあげられない時間のことだ。
私たちにも生活があり、常にわんこと能動的に関わることは不可能。そうした時間は犬にヒマつぶしをしてもらう必要がある。
具体的には、ごはんを食べる時間と1人1匹で遊ぶ時間を用意してあげてほしい。
「ごはんとか秒で無くなりますけど?」とか「うちのコ、おもちゃじゃなくて壁紙しか剝がしません」という方もいるかと思う。
「安心してください。売ってますよ!」というフレーズが脳内で再生された。
オモチャの中にごはんやおやつを仕込める、いわゆる知育玩具というものがある。
他にもかじるのが好きならチューイングトイもおススメだ。
一匹で楽しめるおもちゃを使って退屈を凌いでもらおう
睡眠パート
こちらは言わずもがな。休息である。
ただし犬の眠りは浅い。人間のように熟睡しないコがほとんどだ。いつ危険にさらされるか分からない外での生活をしていた名残だと言われている。
その代わりに頻繁に寝る。
余談だがサッカーのクリスティアーノ・ロナウド選手も90分睡眠を1日5回とると聞いたことがあるが、パフォーマンスを上げるには少しの睡眠を頻繁にとるのがいいのかもしれない。
話が逸れたが、眠りが浅いという特性があるため、なるべく安心できる環境と寝床を用意してあげてほしい。
人間には聞こえない音を聞き分けるので、なるべく静かで、人通りが少なく、包み込まれるような穴倉などがおススメだ。
遊びの種類
次は犬が楽しいと感じる遊びを紹介しよう。
- 探す
- 追いかける、逃げる
- 捕まえる
- 仕留める
- 壊す(食べる)
主にこの5つが含まれる遊びは犬の本能を満たしてくれる。
①探す
鼻を使って獲物を探すという力は、多くの犬が求められた能力だ。
人間には気づくことができない隠れた獲物を、持ち前の嗅覚で発見する。
遊びとしては
- 隠したおやつやオモチャを探す
- あなたとかくれんぼ
- 匂いの嗅ぎ分け
などがおススメだ。
②追いかける、逃げる
獲物を見つけたら追跡に移行する。
匂いをたどり追跡して獲物との距離を縮め、逃げる獲物を追いかける。
遊びとしては
- ボールやフリスビーなどを追いかける
- あなたや犬友達と追いかけっこ
などがおススメだ。
③捕まえる
獲物に追いついたら次は捕まえる。
遊びとしては
転がるボールを追いかけて咥える
フリスビーを空中でキャッチ!
隠したオモチャを見つけて回収
などがおススメだ。
④仕留める
獲物を捕まえたら、仕留める。
遊びとしては
- 咥えたぬいぐるみを振り回す
- ロープで引っぱりっこ
などがあげられる。
興奮しやすい遊びだから、制御できない生徒さんは控えてネ!
⑤壊す(食べる)
最後は捕まえた獲物を食べる。オモチャであれば壊す。
遊びとしては
- ピコピコ鳴るボールの笛の部分を取り出す
- ぬいぐるみやベッドの中綿を出す
- リードを噛みちぎる
などがある。
誤飲事故につながりやすいよ…
この遊びは壊れにくい1匹遊び用のオモチャを使ってネ!
まとめ
少し長くなったので、まとめたいと思う。
犬との生活で最も大切なことは、
これに尽きる。
犬たちは人と仕事をするために造られた。
共有時間を作り、共同作業をすることこそが今を生きる犬たちに最も必要で、ストレスを軽減する唯一の方法だと私は思っている。
この授業を受けた生徒さんの愛犬が、少しでも楽しく生活できることを願って。
ご受講ありがとうございました。